• ホーム
  • 良い腸内環境が、幸せホルモンを増やす
コンテンツ共通TOP
記事イメージ

良い腸内環境が、幸せホルモンを増やす

妊娠期はホルモンバランスの変化によって体だけでなく心も大きく変わるため、不安やストレスの原因となる可能性が高まります。意外に思われるかもしれないですが、腸内環境を整えるとメンタルが落ち着きを取り戻すかもしれません。腸とメンタルヘルスはとても深い関係があるのです。

1.妊娠期はホルモンバランスが変化する

妊娠すると女性の体は多くの変化が現れます。お腹の中の赤ちゃんを健康に育てるため、また、体を赤ちゃんの成長に適した状態に保つためにホルモンバランスが変化します。

妊娠を知らせるサインがあります

体は妊娠初期に「妊娠しているよ」というサイン(生理の停止、つわり、疲れやすさなど)を出します。これはヒト絨毛性ゴナドトロピンという重要なホルモンによるもので、妊娠の最初の数週間で急速に増加します。

妊娠にあわせて体が変化します

妊娠中はエストロゲンとプロゲステロンというホルモンが増えることによって、お腹の中で赤ちゃんが快適に過ごせるようになります。お腹の中の赤ちゃんにとって心地よい場所に変化していくのです。

赤ちゃんに栄養を送るようになります

ヒト胎盤ラクトゲンというホルモンが増えると、お腹の中の赤ちゃんが成長に必要な酸素や栄養をしっかりと受け取れるようになります。

2.妊娠中と産後の「心」の変化

このような変化の中で妊娠中の体は大きく変化します。それに伴って心にも多くのストレスがかかります。

〈妊娠中〉

妊娠中は女性ホルモンのバランスが大きく変化する影響で、「怒り」「悲しみ」「気分の落ち込み」など感情の起伏が激しくなる傾向があります。また出産への不安や体調の変化、仕事との両立、家庭での人間関係の変化、お金や仕事の事… 様々なことがストレスの要因となります。

〈出産後〉

日本では産後のママの15%に「産後うつ」が認められるという報告があり、決して少ない数字ではありません。これは短期間で治まる「マタニティ・ブルーズ」とは違うもので、極端に感情がコントロールできなくなったり、睡眠障害や食欲減退や過食などの症状が現れることがあります。とにかく心理的ストレスを増やさないように気をつけたいところです。

出典:産婦人科診療ガイドライン産科編2023 279ページ

3.腸内環境とメンタルヘルスのつながり

では、腸内環境とメンタルヘルスにはどのような相関関係があるのでしょうか。

実は、腸内環境は脳と直接通信をしています。お腹の中を快適に保つと、怒りや焦りなどのマイナスな感情を抑制して精神を安定させてくれる脳内セロトニン(幸せホルモンとも呼ばれているホルモン)が作られやすくなります。ですが実はなんと、脳で作られるセロトニンはごくわずかで、その大部分はお腹の中で作られている、ということが最近の研究でわかってきました。これは「腸内セロトニン」と呼ばれています。

腸で作られる腸内セロトニンが脳に入ることはできませんが、脳の中でセロトニンが作られるために必要な物質は腸から脳に送られています。その物質(トリプトファン)が脳内でセロトニンに変換されてメンタル安定のために働いているのです。つまり、腸内環境が良い状態にあると、より多くのトリプトファンが脳内セロトニンに変換される可能性が高くなります。
セロトニンを増やす方法について難しく考える必要はありません。まずはできることから習慣にしてみましょう。

出典:腸内細菌による消化管神経回路の修飾 P3
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim/36/1/36_21/_pdf)


<腸内セロトニンのための、手軽な習慣例>
バランスの良い食事:
野菜や鶏肉、魚料理などを中心にしっかりと。とにかく食事を楽しむことが大切です。

十分な水分補給:
腸内セロトニンを増やすためには良好な腸内環境が大事。腸内環境を整えるにはしっかりと水分を摂ることです。

定期的な運動:軽めのウォーキングでも良いです。とにかく20〜30分は体を動かすことを習慣にしてみてください。

出典:脳腸相関(公益財団法人 腸内細菌学会)
(https://bifidus-fund.jp/keyword/kw033.shtml)

まとめ

妊娠期間中や産後はホルモンバランスの変化によって気分が不安定になってしまいます。しかし、これらは腸内環境をしっかり整えてセロトニンを作ることで心の不調を回避できる可能性が高まります。幸せホルモンを増やす習慣を今日から始めてみませんか。

監修者

監修:杉田 豊隆 医師

日本産科婦人科学会専門医、杉田レディースクリニック院長

医療法人社団 結樹会 理事長、スターフィールドクリニック横浜 院長
香川大学医学部を卒業後、長崎大学病院をはじめ離島を含む長崎県全域や福岡県、佐賀県の病院に勤務。「女性の家庭医」として、婦人科における診療経験を豊富に持つ。現在は長崎市内で、レディースクリニックの院長として多くの女性の健康を支援している。