コンテンツ共通TOP
記事イメージ

妊娠期の花粉症対策

花粉症に苦しむ女性は、通常期であれば医師によって処方された薬を服用することができますが、妊娠期となるとそうはいきません。そこで、この記事ではさまざまな対策方法があることを解説します。

1.妊娠中の花粉症の対応

妊娠は女性にとって大きな喜びであると思いますが、同時に多くの変化を伴います。その中でも、そろそろやって来る花粉の時期の花粉症対策は特に注意が必要です。通常、花粉症の治療には抗ヒスタミン薬やステロイド、鼻づまりを解消する薬が用いられますが、妊娠中、これらを使うことはお勧めできません。ゾレア皮下注射やヒスタグロビン注射などのアレルギー注射の接種も同様に避けるべきです(あるいは、かかりつけ医によく相談することです)。これらの治療方法は妊娠していない時期では有効ですが、妊娠期には胎児に影響を与える可能性があります。 なお、薬に頼らない方法としては、次のような方法が考えられます。

◆環境コントロール

室内での花粉の侵入を最小限に抑えるために、窓を閉める、1週間に1度はエアコンのフィルターを掃除する、空気清浄機を利用するなどが有効です。室内を清潔に保ち、定期的に掃除を行うことで花粉によるダメージを減らすことができます。

◆適切な服装

外出時は帽子や花粉対策メガネを着用することで花粉の接触を防げます。帰宅時には上着をすぐに脱いで外で払い、花粉を室内に持ち込まないようにすると良いです。

◆身体のケア

目や鼻の衛生に注意し、こまめに洗顔やうがいを行うことで花粉を除去します。外出後に顔や目を洗ったり鼻うがいをしたりすることも対策の一つとして有効です。

2.なぜこれらの治療がダメなのか

妊娠初期は特に、胎児の臓器が形成される大切な時期。例えば、胎児の心臓、脳、脊椎などの重要な器官が形成され始めます。これらの器官は生命維持に不可欠であり、もしこの初期段階で損傷が発生してしまったら、後の発達に重大な影響を及ぼす可能性があります。さらに、外的要因による先天性異常のリスクが最も高い時期でもあります。薬剤、放射線、感染症、栄養不足、環境汚染などが胎児に影響を与える可能性があるからです。
ちなみに、「どうしてもキツい」という場合には、医師の指導のもとで妊娠初期にはクロモグリク酸ナトリウムの点鼻・点眼薬を使用する場合もあります。

では、薬に頼らない花粉症対策として、どのような方法があるのでしょうか。以下にいくつかの対策を挙げてみました。

◆食生活の見直し

ビタミンCやビタミンEを多く含む食品は、アレルギー症状を和らげる可能性を秘めています。果物や野菜、ナッツ類をバランス良く摂取することが推奨されますが、糖分の摂りすぎにつながってしまうこともありますので十分に気をつけてください。

◆グルテンの摂りすぎに注意する

パンやパスタ、うどんといった小麦製品の摂取をストップすることが、花粉症の予防に効果的かもしれません。小麦をはじめとした穀物には「グルテン」という難消化性たんぱく質が含まれています。これを摂りすぎると腸の炎症を引き起こしてしまいますが、グルテンを控えることで腸のバリア機能を支えることにつながるかもしれません。

◆腸内環境を整える

腸内環境を整えることで花粉症に備えるという方法があります。そのために乳酸菌を多く含むヨーグルトや発酵食品を摂取します。特に妊婦さんにとって、乳酸菌の摂取は安心できる方法の一つなのではないでしょうか。

3.通常期の花粉治療に戻れるタイミング

妊娠中期(16週〜27週)以降になると、抗ヒスタミンの点鼻・点眼薬が選択肢になります。それでも、効果不十分な場合は抗ヒスタミン薬内服やステロイド点鼻・点眼を最低限使用します。しかし、その選択は慎重に行われるべきです。妊娠中の薬の使用は、常にリスクと利益を天秤にかける必要があります。

<事例の一部をご紹介します>

 点鼻薬/抗ヒスタミンの点鼻薬
 眼薬/抗ヒスタミン作用のある眼薬
※上記はいずれも、妊娠中の使用は医師の許可が必要です

いずれも自己判断で薬に頼るのではなく、自然療法や生活習慣の見直しを優先し、必要があれば専門医の助言を仰いでください。

4.花粉症に対する乳酸菌の役割

乳酸菌は、腸内環境を整えるだけでなく花粉症の対策としても注目されています。腸だけでなく、鼻や喉など全身の粘膜免疫を良い効果があるとされており、これによって花粉などのアレルゲンによる刺激に対する体の反応が緩和されるからです。 さらに、腸内環境を良好に保つことでストレスに対する体の反応が穏やかになり、結果として花粉症の症状の軽減に役立つことも期待できます(私たちの腸内には、免疫系の約70%が集まっています)。ストレスは、免疫系に影響を与えてアレルギー症状を悪化させることがあるため、腸内環境の改善と花粉症の改善は表裏一体でもあるのです。



まとめ

妊娠期は体の状況が普段とは違うため、花粉症の治療法も普段通りにはならないことを想定して対策しなければいけません。花粉を屋内に持ち込まない工夫など、生活習慣の改善がありますが、つい忘れてしまう日もあるかもしれません。本記事ではいくつか対策をご紹介いたしましたが、ご自身にあった対策を取り入れてみてください。

監修者

監修:新藤 貴雄医師

日本泌尿器科学会泌尿器科専門医、日本抗加齢医学会抗加齢専門医

足の静脈瘤クリニック横浜院院長
下肢静脈瘤の症状の回復に貢献するだけでなく、婦人科・不妊クリニックでの経験や知識も併せ持っている。