監修:今西 洋介医師
新生児科医、小児科医、小児医療ジャーナリスト日本小児科学会専門医/日本周産期新生児学会・新生児専門医。小児公衆衛生学者。
富山大学医学部卒業後、都市部と地方部の両方のNICUで新生児医療に従事する。
Xアカウント「ふらいと」(@doctor_nw)やニュースレターを通じて、医療啓発を行いつつ子どもの社会問題を社会に提起している。
監修書籍に『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』『ぼくのかぞく ぼくのからだ』など
妊娠は、母体と胎児の間でホルモン調節・免疫系の調整・栄養素と酸素の供給などの相互作用が行われる時期です。具体的には、以下のようなことが体内で起こっているのです。
上記のような母体環境の中で、赤ちゃんの健康な成長は始まります。特に妊娠初期段階での菌環境の形成は、赤ちゃんの免疫システムと健康の基盤を築きますので、母体は入念に気配りをしなければなりません。
妊娠期が進み、自然分娩の過程になると赤ちゃんは母親の膣内および便内の細菌、特に乳酸棹菌やビフィズス菌などの有益な菌にさらされます。これにより、赤ちゃんの腸内に最初の菌コロニーが形成され、健康な免疫システムの発達を促します。
ですが、出産方法を含む何らかの要因によって菌環境の不均衡や特定の細菌群の欠如が見られると、1型糖尿病、セリアック病、肥満、アレルギー、喘息など、子どもの将来の健康に長期的な影響を及ぼすことが懸念されています。このように母体の菌質環境とその赤ちゃんへの伝播は、赤ちゃんの健康と免疫システムの発達に重要な役割を果たします。妊娠中および産後のママが自らの菌環境のバランスを整えることは、子どもたちの健康にとっても大変重要なことなのです。
妊娠中の母体の菌質環境は赤ちゃんの発育に大きな影響があることをご理解いただけたと思いますが、母体の腸内フローラのバランスを整えて健康な菌環境を形成するためにはどうしたら良いのでしょうか。その解決策の一つとして、ロイテリ菌のような乳酸菌の摂取が挙げられます。理由としては、ロイテリ菌は乳酸菌の中でもヒト母乳由来の乳酸菌であるからです。
さてこのロイテリ菌、母体の免疫機能を強化するだけでなく母乳の質を改善し、赤ちゃんが受け取る栄養素のバランスも改善した報告もあります。結果的に赤ちゃんの免疫システムの発達を助け、アレルギーや病気のリスクを減少させることが期待できます。
出典:Probiotic lactobacilli in breast milk and infant stool in relation to oral intake during the first year of life
(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19525871/)
妊娠中の母体の菌環境は赤ちゃんの免疫システム発達に大きく関わります。この期間は歯肉炎や歯周炎になりやすく、その毒素がやがてお腹の中の赤ちゃんに影響してしまう可能性もあります。口内環境と腸内環境の双方に気を配り、健やかな赤ちゃんが生まれるための準備をしていきましょう。